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1-27 ツバメの夫婦の話   9/18

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暗くてよくわからないが、これがあの有名な嘉峪関である。夕方、ずぶ濡れのままこの暗い中をこれから観光する。このツアーとパリダカールラリーとの違いは、どのような状況であろうと、このようにきちんと観光が組み込まれていることである。

砂漠の中に遺跡のように崩れた壁が残っているだけかと思っていたが、壁と城門はきれいに修復されて公園のようになっていた。しっかり入場料も徴収できるように門も構えていた。入場は21時までである。ライトアップの設備もある。日もかなり落ちて夕暮れの小雨の中、荒涼とした大地が広がっていた。

嘉峪関には悲しいツバメの夫婦の伝説があると、通訳の王さんがしっかりした日本語で教えてくれた。昔、ここにツバメの夫婦がいた。ある日、外に出かけたが帰りが遅くなって夜になってしまった。鉄の扉をたたいたが、夜は門を開けてはいけない決まりになっていた。兵士たちも入れてあげたかったが門を開けることは許されなかった。外には休む所がない。翌朝、ツバメの夫婦は城壁の外で死んでいるのが見つかった。

それ以来、城壁の中で小石を両手に持って叩くとツバメの鳴き声が聞こえる、という話である。本当ににそのような音がするのだ。石をたたくと、周囲の壁に音が反響してチュンチュンと音がするのだ。夕暮れの中、ツバメの夫婦の話を聞いた後のこの音は心に刺さってくる。チュンチュン、チュンチュン。

我々もホテルの門が閉まらないうちに早く行こう。夜中まで観光していて事故ったバカなバイク乗りの伝説がある、などと言われてはたまったものじゃない。
現地スタッフは見事に期待に応えてくれる。出発しようという段になって、嘉峪関からホテルまで道がわからないと、先導車でもめているのだ。後で地図を見たが、嘉峪関市というのは大して大きい町ではない。町の中心まで5~6kmぐらいしか離れていない。幸いなことに、タクシーを拾うことができた。我々も夜間街中で道がわからなかったら、タクシーを拾って後について行けと教わっている。しかし、旅行会社がやるか。

ともかく先導車がタクシーの後についていく。夜間なのでゆっくり走る。しかし、どうもこちらの人は後に続く者を気にかけながら運転するのが苦手らしい。昼間の先導車と同じように、タクシーは我々を置いて先に行ってしまった。幸い、すぐに再会することはできたが、先導車の中ではさぞタクシーのことを非難していたことだろう。しかし、後ろから走っている我々にしてみたら、どっこいどっこいの話である。他山の石となせ、とは中国の諺ではなかったか。

20時過ぎ、ホテルに着く。ここで通訳の郭さん、お役御免となる。あまりにも日本語が通じないからだ。このツアーでは意思が通じないと危険な場合がある。添乗員が餞別を渡してあげると、これでお別れです、これから一生懸命頑張りますと、我々のところに二度もあいさつに来た。「漢の時代のハカリ」では、「ツバメの夫婦」には敵わなかったようだ。





by chukocb400sb | 2018-03-24 02:54 | 1 西安から敦煌 | Comments(0)

この旅行記は、シルクロードを西安からベネツィアまでレンタル・オートバイのパックツアーを乗り継ぎ、17年かけて走ってきた記録である。


by 山田 英司