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6-20 マッドマックスの主役  9/17

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中央アジアの道は、周囲の風景は良かったものの路面は劣悪だった。金のあるはずのトルクメニスタンでさえ、幹線道路はひび割れ、バイクのハンドルが取られるような深い轍ができていた。国境事務所の列の中でイランから来た運転手がトルクメニスタンの道は最悪だとこぼしていた。景色は殺風景だが、イランの道はいい。幹線道路は高速化され、しかも料金所がない。要所に給油所と広いドライブインがある。ドライブインのレストランも広くて清潔である。

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イランでは公共の交通機関が発達していないので、長距離の移動はバスである。政策的にガソリン価格が安く抑えられているので、家族連れの移動は専ら自家用車である。イランは自動車王国で、年間150万台の自動車を自国で生産しておりこの数字は世界の中で18番目である。中東・北アフリカ地域では最大の自動車生産国である。エンジンの設計まで手掛けており、イランの自動車産業はGDPの10%を占め、石油産業に次いでイラン経済を支えている。

アリさんの話だと、イランの国産車は80万で手に入るそうだ。ただこの車は元KIA製であるが、今国内で製造しているのはただの箱である。大変危ない車であると言っていた。国産車は外国のブランドに比べ品質はかなり劣るという。シトロエンやプジョーが国内に合弁工場を持っているのでシェアは高いが価格も高いらしい。

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物流の中心はトラックである。いろいろなトラックが走っているが中国製が多い。しかしすぐ壊れるので問題になっているという。イランを走っているとMACKというトラックをよく見かける。アメリカ製のトラックである。アリさんの話では、このトラックは驚くほど耐久性があり、戦争中のトラックを修理しながら今でも走っているそうだ。MACKトラックはアメリカの戦争映画に必ず出てくるトラックである。

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まさかこのMACKが第2次大戦中のものではあるまいと思って調べてみたら、1960年代に製造されたR600というタイプであることが分かった。重量物運搬用のトラックで、ディーゼルターボチャージャー搭載の排気量11Lまたは16Lの直列8気筒である。

マッドマックス2でメルギブソンが脱出のおとりとしてオイルトレーラーをけん引し暴走族とバトルを繰り広げたトラックである。運転席の脇にある排気塔から黒い煙を吐きながら疾走するMACKは、止められるものなら止めてみろという意思の塊りとして圧倒的な存在感を示していた。

マッドマックス1のインターセプターといい、ローアングルから撮影された巨大なMACKといい、車はこの映画の主役の一人であった。ちなみに映画で暴走族の乗るバイクのほとんどはカワサキだったらしい。あのプロテクターをつけたモヒカン刈りが乗りこなしていたのはZ1だったそうである。いいねぇ、役者がそろっているではないか。

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by chukocb400sb | 2022-02-18 06:20 | 6 マシュハドからタブリーズ | Comments(0)

この旅行記は、シルクロードを西安からベネツィアまでレンタル・オートバイのパックツアーを乗り継ぎ、17年かけて走ってきた記録である。


by 山田 英司