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7-08 宿泊地変更の理由    9/20

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今日の目的地アールを目指して西に向かう。風景は殺風景な土漠と違い、草原地帯が広がる。わずかな緑で風景の印象は全く違ってくる。人家は少なく、草原の中に所々畑が広がる。しかし草原一面を畑にするだけの降水量はないらしい。アールまでドゥバヤジットからおよそ100kmの距離であるがトルコの一般道は道がいい。道は高速道路仕様であるが無料である。信号には出くわしたことがない。

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走ること1時間そこそこでアールの町に着いてしまった。アールは先ほどのドゥバヤジットを含むトルコ東部地域の県都である。人口は10万人弱でここもやはりクルド人が多い。後から分かった話であるが、この地域でのクルド人とトルコ政府の関係は政治的な緊張が高まったという水準ではなく、武力衝突が発生しているという危ない状態であった。

この時期は直前の国政選挙で与党が大敗し、政治が非常に不安定な時期にあった。かねてからクルド問題は内政上の課題であったが、ここ数年トルコ政府はクルドの権利を主張してテロ活動を行ってきたクルド労働者党(PKK)のカリスマ的指導者で現在刑務所に収容される人物との間で対話を開始し、クルド系住民の権利拡大を図るなど融和策を進めてきた。

一方で、政府はPKKによるテロの脅威を理由とし、2015年7月北イラクのPKK施設を越境爆撃するとともに、国内各所において一斉摘発を実施。また、南東部では都市部でも軍事作戦を展開。これに対しPKKも南東部を中心にテロ活動を活発化させてきた。先月も我々が走ってきた道の近くの村で軍が襲撃を受けたり、シリア国境付近では爆弾テロで多くの兵士が犠牲になっていた。

我々がトルコに行く2週間前に起きた事件は手が込んでいる。犯人は道路に爆弾を仕掛け、それを自分たちが軍に通報したのである。そして爆弾処理に出動した軍に対し遠隔操作で別の爆弾を起動させたのである。この時は16人が犠牲になった。襲撃の対象となっているのは軍だけとは限らない。民間のトラックも襲われたりしている。

政治に敏感な欧州の観光客はトルコツアーを相次いでキャンセルし、観光業者は悲鳴を上げていたのである。もし海外からの観光客が襲われればトルコの観光業にとっては致命的なことになる。ケマルが我々の宿泊地を国境付近から内陸地に変えたのはそのような事情があったのである。

日本の外務省のトルコについての安全情報ではシリア・イラク国境付近はオレンジ色、トルコ全体では黄色であった。現地に来てみると、平均で黄色なのではなくピンポイントで赤なのである。国境からはなるべく離れた方が良い。ただし庶民の生活はえてして均衡を保とうとするものである。新聞にはとげとげしい記事が載っているのかもしれないが、少なくともアールの町は夜も人通りが多く、ぶらぶらと歩いていると平和な商店街なのである。

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by chukocb400sb | 2022-09-23 07:08 | 7 タブリーズからイスタンブル | Comments(0)

この旅行記は、シルクロードを西安からベネツィアまでレンタル・オートバイのパックツアーを乗り継ぎ、17年かけて走ってきた記録である。


by 山田 英司