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Candirという村で給油となる。ここから幹線道路を外れ田舎道に入る。この道が大変いい。道は狭いが舗装は良く、緩やかなカーブと起伏のある草原が広がっている。雨が少ないのだろう、樹木はほとんど見当たらない。車も見ることなく、所々に小さな村があるだけである。

通り抜けた村の広場に何やら人が集まってお祭りめいたことをしていた。バイクで走りながら横目で見た光景なので何のお祭りかわからなかったが、あとで聞いたら犠牲祭という祭りであると教えられた。そういえばシワスでも夜の人通りが多かったのはこの祭りであった。神に羊や牛を屠って捧げる祭りである。昔は都市部でも各家庭で羊を買ってきて屠っていたらしいが、ある時から禁止になり業者が屠った肉を買ってきてそれを家庭で料理するお祭りという形になっているということである。

しかし地方の村では今でも羊や牛を神にささげる儀式がリアルに行われているということである。あの時見かけた村の広場の真ん中では、己の運命を悟った生贄たちが哀れな叫び声をあげていたのかもしれない。そんなこととはつゆ知らず何やら楽しそうな村祭りぐらいにしか思っていなかった。改めて哀悼の意を表したい。

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村を通り抜けると、空と草原と道しかない風景が広がっていた。所々道が分かれているが標識も何もないのでケマルが慎重に地図を確認しながら先導する。地形はなだらかな丘陵が続き変化に富んでいる。空に浮かぶ雲はこの地が雨に見守られていることを示し、そうでなければ不毛であるはずの火山灰の堆積した高原に見事な草原を生成させた。

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道も丘の間を縫って緩いカーブとアップダウンが続く。一つ坂を越すとその向こうにまた草原と丘が広がり、丘の裾を巻いていくと次の草原と丘が現れる。風景の要素は少ないが、その変化は無限に続く。この草千里はどこまで続くのか。どこまでも続いている。目を閉じればバイクの音と振動は今でも続いている。そして夢の中のような草原の道を走っている。丘を廻る。空を見上げる。雲が流れる。風の中を抜けていく。時間もまた輪になり続いている。

特別にこのルートを教えよう。ケマルが極秘の地図を見せてくれた。

ケマル、分かれ道でうろうろしていたのはこんないい加減な地図だったからかい。

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by chukocb400sb | 2023-01-06 07:23 | 7 タブリーズからイスタンブル | Comments(0)

この旅行記は、シルクロードを西安からベネツィアまでレンタル・オートバイのパックツアーを乗り継ぎ、17年かけて走ってきた記録である。


by 山田 英司