2-00 敦煌からウルムチ・序 2002/8
2023年 12月 31日

この地は、雨と雲が空を見放した世界である。年間の降水量よりも蒸発量の方がはるかに多く、乾ききった風が吹いている。そのような地でも、山の雪解けの伏流水を糧として、農業と観光を生業としながら暮らしている人たちがいる。そしてここで見かけたたのは、僅かな頼りを必死になって手繰り寄せて生きていこうとする土産物屋の子供たちや店の踊り子たちであった。
敦煌のような国際的な観光地ならばともかく、ウルムチのように石油開発でにぎわっている都市ならばともかく、その間に点在するオアシス都市は貧しい。西遊記に出てくる火焔山を見て感動したとしても、高昌・交河故城やアスタナ古墳群がいかに歴史的に重要な遺跡であることを理解したとしても、観光客からは大して金は落ちてこない。それは、飲食店と土産物屋の数を見れば容易に想像がつく。観光地とされているが、ただの埃っぽい田舎である。ここで生きていくことは容易ではない。要は、それ以上の社会の規模を支える水がないのだ。
ところで、人事異動で地方の事業所に行くことになった。本社で会議を招集する側から、招集される側に変わったのである。招集する側は会議の日程を調整できるが、招集される側は日程を選べない。2回目のツアーの日程も9月上旬と決まった。しかし、昨年本社にいた時、部長に取り入ってこの時期に開かれていた会議を減らしておいたおかげで、何の憂いもなくツアーに申し込むことができた。思い切って手を打っておいて良かった。我ながら、この先見の明については自分自身を誉めてあげたいと思った。
どうだろう、貧しいオアシスで必死になって働いている人々と、会議を潰してまで旅行に来ているこの彼我の差は。生活環境を取り除いたとしてもなお残る、人間としての「軸」の立ち位置にそもそも違いが生じてないだろうか。はるか遠い昔、真理を求めてこの道を命がけでたどった三蔵法師ならばどう考えたであろう。考えようとして止めた。自分は三蔵法師ではない。ましてや、孫悟空でもない。最近は猪八戒でもいいかなと思う今日この頃である。
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by chukocb400sb
| 2023-12-31 23:45
| 2 敦煌からウルムチ
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