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1-35 走行音        9/19

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毎日誰かのバイクが必ず故障する。朝早く出ても、目的地に着くのが遅くなるのは、時間のかかる昼食とバイクの故障のせいである。と、今まで散々バイクのことを冷やかしてきた。しかし中国人スタッフは何とか直して、必ず動くようにする。そして目的地に着く。

昭和30年代の日本もそうであった。小学生の時、親に買ってもらった中古の自転車を直しながら乗っていた。パンクの修理は苦にならなかった。壊れた機械は自分たちで直してきた。初めて買ったオフロードバイクはまだキャブなどをいじっていた。しかし、ロードバイクに変えた後は車検に出すだけだ。今の我々に彼らと同じことができるか。このような環境でバイクを直しながら目的地にたどりつくことができるか。ステップを溶接しながら走り続けることはできるか。


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常にフルスロットルで走る。一度スロットルを緩めると、前車との間が空いてしまう。空いてしまうともう間を詰められない。何せブレーキを踏むようなカーブがないのだ。間を詰めるためには、姿勢を低くして風の抵抗を少なくする。時間はかかるが、じわじわと距離を縮めることができる。速度は体感で大体70~80km/Hぐらいだろう。体感で、と言うのは速度計が死んでいるからである。常に0を差して寝ている。時々路面のギャップで20km/Hぐらいまで跳ね上がることがある。

トラックを追い抜くときは怖い。150CCのバイクで追い抜きをかけるためには、一度3速に落として目いっぱいスロットルを開けないと加速が得られない。4速ではトルクが出てこないので、トップスピードになってから入れる。対向車線に出て追い抜こうとする時、遠くに対向車が見えると時間との勝負になる。追い抜きに時間がかかるので、対向車がぐんぐん近づいてくる。

時々道路にわだち掘れがあるので、気を付けないとハンドルを振られる。トラックを抜いて、走行車線に戻っても全速力で車間距離を空けてあげないと、後続車が飛び込んで来ることができない。抜いた車の前にバイクが詰まっていると、後から来たバイクの連なるスペースがなくなる。追い越せるときでも、追い越していいかどうかを判断しなければいけない。排気量の大きいバイクならば、必要ならば前か横に離脱できる。しかし、非力なバイクではこれ以上加速を得ることはできない。動きの選択肢は限られてくる。

ハンドルの振動が激しく、走行中はスロットルをフルで固定しているため右の上腕と手がつらい。肩から背中にかけても疲労が蓄積する。体だけではない。何日も、朝から晩まで一日中バイクの音を聞いていると、夜寝たときも頭の中でワーンという音が聞こえてくる。頭の中で走行音が脅迫的に再生されているようである。幸いなことに何日も続かず、その後は何もなかった。しかし、最初は自分の頭が変調をきたしたのかと思い不安であった。




by chukocb400sb | 2018-05-18 03:10 | 1 西安から敦煌 | Comments(0)

この旅行記は、シルクロードを西安からベネツィアまでレンタル・オートバイのパックツアーを乗り継ぎ、17年かけて走ってきた記録である。


by 山田 英司