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6-33 ミラード・タワー    9/18

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再び狭いハイエースに押し込められてテヘランまで半日かけて移動した。夕食の後、テヘランでぜひ行ってみたい所があった。初めてテヘランに来て市内のどこからもよく見える高いタワーがあったのだ。ミラード・タワーと言って7年前に出来たばかりである。高さは435m。イランで最も高い建造物である。

人間は高いところに登りたがるものである。動物の中でも高いところに登りたがるのはサルと人間ぐらいしかいないらしい。人間の場合、わざわざ金をかけて高い建造物を作りそれに金を払って登りに行く、つまりこれが商売として成り立っているわけだから不思議な話である。

昔、大阪の通天閣に行ったとき、窓口で入場券を売る人がいてエレベーターの前に行くとその入場券をもぎる人がいて、上に着くとエレベーターの前でまたいらっしゃいませという人がいた。いったいこの通天閣は何人の人を雇用しているのだろうかと考えたものである。

自分もとにかく何とかタワーと名の付くものには登ってみないと気が済まない。しかし夜中に知らない街に一人で出かけるのは嫌なので、誰か引きずり込むことにした。声をかけるのは年下のKさんしかいない。Kさんはこのツアーの第1回の時から一緒で、バイクの腕は確かで海外慣れしている。おまけに実直な人柄で、ここに付け込むことにして声をかけた。嫌そうな雰囲気だったがこれまでの付き合いから断り切れず行動を共にすることを承知してくれた。これで問題の一つは解決した。

問題の二つ目はどうやって目的地まで行って帰ってくるかである。ホテルからミラードタワーまで4~5kmある。何せ公共の交通機関がないのでタクシーしか移動手段がない。行きはいいとして問題は帰りである。タクシーが捕まるのか。ホテルのインフォメーションカウンターのところに立っていた年配のフロントサービスに聞いてみた。

年配のフロントサービスは鼻からずり落ちそうな眼鏡越しにじっと私の顔を見た後、メモ用紙にさらさらとホテルの名前と電話番号を書いてくれた。これを向こうで見せろと渡してくれた。誰に見せればいいのかわからないが、これがないと帰ってこれないらしい。そして今タクシーを呼ぶから待っていろと言う。料金はここで払うらしい。フロントサービスに7ドル(約800円)渡す。ホテルには客待ちのタクシーなどいないらしい。

15分くらいロビー待つと、先ほどのフロントサービスがこっちへ来いと合図してくれた。タクシーがホテルに着くと、運転手がフロントサービスのところまできて客をピックアップする仕組みになっているらしい。待っていたのはケビン・ベーコンみたいな切れのいい運転手であった。車はタクシーではなく普通の乗用車である。白タクではないか。

我々を乗せるとフロントガラスにひびの入った車で夜の街に滑り出した。夜の8時過ぎであるが交通量が多い。ケビン・ベーコンは荒っぽい運転であっという間にミラードタワーの手前まで寄せて来た。タワーは小高い丘の上に立っており、道路はその丘を回るようにタワー入り口まで続いている。ところがここでタワーに向かう車が渋滞して動かないのである。

ケビン・ベーコンはタクシーの鼻先を列から出すと細い分かれ道に車を進めていった。そしてタワー下のビルの裏口らしいところで車を止めると、あと少し先だから歩いて行けという。心細かったが礼を言って車から降り、人の歩いている方向に行く。

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タワー足元の広場に出たがすさまじい人の数である。家族連れが多い。考えてみれば、今日は木曜日の夜で夏休みである。出来たばかりの人気スポットならば当然である。ところでどこに行けばタワーに登れるのかわからない。うろうろしてタワーから離れたところにチケットの販売所らしきものを見つけた。ここもかなりの列である。

やっと窓口にたどり着くが、チケットが何種類かある。値段によって上がれるところが違うらしい。どれを買っていいかわからないが、窓口に描かれていたタワーの絵の一番高いところにSkyDeckと書かれた場所を指で指す。チケットは9万リアル(約650円)であった。窓口で指さされた方に向かうとタワーの入口があった。

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入り口を入って驚いた。ものすごい人の列である。エレベーターを待つ列が円形のビル内を一周している。いったいどのくらい待つのか。我々が並んでいるのはタワー足元のビルの1階である。ビルの上の方にはショッピングセンターや映画館もある。混むわけである。50分ぐらい待ってやっと展望台に登った。展望台は地上300mである。この高さでガラスドアの外は金網のオープンデッキである。風の強い日はどうなるのか。

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テヘラン1200万人の夜景である。テヘランには高層ビルがないので見晴らしがいい。市内を幅の広い高速道路が縦横に走っていて交通量が多い。夜中なのに人の動きが活発である。そして想像以上に明るい街である。しかし展望台から見下ろした時、我々二人とも考えたのは帰りの道である。帰り方が分からない。最悪歩いて帰る覚悟である。

ホテル方向との間に大きな高速道路が走っていてあれをどうやって越えるのか、テヘランの高速道路は立体交差ではない。みたところ歩道橋などは見えない。橋のない大河をどうやってわたるのか。気もそぞろに適当に写真を撮って早々に切り上げることにした。

下りのエレベーターはビルの5階どまりである。ここからエスカレーターに乗ってショッピングセンターのあるフロアーをめぐってやっと出口に出ることができた。ここからどうやって帰ればいいのだろうか。見渡してもタクシーなど止まっていない。バス停らしきものもない。

しかし左右を見渡すとありがたいことに、入り口横に「TAXI CENTER」と表示された待合室があった。待合室の脇にクリップボードを持ってい立っている人がいた。受け付けの人らしい。ホテルで渡されたメモを見せると、一覧表に記入しすぐに電話をかけてくれた。タクシーの運転手にかけているらしい。帰りのタクシーも15分くらいで来てくれた。

運転手は不愛想なお兄ちゃんで乱暴な運転であっという間にホテルに着いた。降りるとき、メーター表示に14.850と出ていたので2万リアル渡したら、タクシーの運転手がいきなり怒り出し「トマン」だと怒鳴り始めた。トマンというのはリアルの補助単位で10リアルを1トマンで計算する。慌てて15万リアル(約1000円)を渡す。お釣りはくれなかった。怒らなくてもいいじゃないか。外国人なんだから大目に見てくれよ。でも、何とか無事に帰ることができた。最後はちょっとドキドキしたが約2時間と2500円ぐらいの冒険であった。








by chukocb400sb | 2022-05-20 06:33 | 6 マシュハドからタブリーズ | Comments(0)

この旅行記は、シルクロードを西安からベネツィアまでレンタル・オートバイのパックツアーを乗り継ぎ、17年かけて走ってきた記録である。


by 山田 英司