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6-37 交通事故ワースト10  9/20

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ツアーに行く前に旅行会社からは、イランの車の運転は荒っぽいから気をつけろと言われていた。しかし現地で体験した限りでは意外と道を譲ってくれるので聞いていたほど危ないと感じたことはなかった。同行のベテランのメンバーも中国では本気で車を突っ込んでくる、中国の方が怖いという評価であった。何か国も走っているメンバーが言うのだから間違いはないだろう。

途中で交通事故の現場に出会った。道の真ん中でトラックがひっくり返っていた。警官が道路を規制して片側通行にしている。道端にうずくまったおばあさんを皆で救急車に運び込もうとしていた。トラックの運転席の横側は大きくへこんでいる。他に事故車らしいものが見えないので単独事故のようである。

イランでこのような事故を初めて見たが、この国は交通事故が多い。年間2万人弱が交通事故で亡くなっている。これは人口当たり日本のおよそ4倍の死亡率である。イランでは死亡原因の2番目が交通事故によるものである。世界でも国別ワースト10に入っている。政府もこれは国の恥であると対策に力を入れてきた。国の目標として毎年死亡者数を10%削減することが決められた。

以前は警察の発表する死亡者数と赤新月社の管轄する救急隊が発表する死亡者数が異なっていた。そのため事故件数は減っているのに、死亡者数が増加しているというわけのわからない現象が起きて政府内でももめる原因となった。これは負傷者が病院に運ばれて亡くなった数字を警察が把握していないからである。最終的には救急隊の数字に統一された。

事故は運転手の劣悪な労働環境や、欠陥だらけの点検で取得する車検、車両の整備不良や粗悪な部品も事故の原因となっている。高速道路を走っていた長距離バスの低品質のタイヤがバーストし、対向車線に飛び出し逆方向から走ってきたバスと正面衝突し44人が死亡するという事故も起きている。

以前はトラックやバスといったプロのドライバーの粗暴な運転が問題になっていた。警察は法律を改正し、タコメーターを警察でチェックしたりバスに覆面警官を乗せて取り締まりを行ったりした。その結果100以上のバスとトラックの運営会社が営業停止となった。これでかなり成果が上がり、国別世界ランキングではワースト9からワースト10に順位を改善することができた。

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事故が多いとはいえイランの幹線道路は路面がいいし地方では交通量が少ない、バイクも信頼できそうだし200ccともなればそこそこのパワーがある。で、ついつい速度を上げてしまう。終点のタブリーズには早々と14時過ぎに着いてしまった。市内のバーガー屋で昼食となるがここが終点であった。

このツアーは時々、長く辛かった旅の終点にふさわしい万感の思いがこみ上げる、そういった感情的な盛り上りにふさわしい場所など一切顧みることなくただ旅行会社の作業が便利な場所で終わることが多々ある。既に店の前にはバイクを持ち帰るための旅行会社のトラックが待っていた。なんだここで終わりかよ、仕方なく皆でバイクを荷台に積むのを手伝う。これが世話になったバイクとの最後の写真である。

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店に入りハンバーグとコーラでペルシアの大地に乾杯する。我々の隣では女子学生風の女の子たちがおしゃべりに夢中になってやはりコーラとハンバーグをぱくついていた。我々のバイクの旅はシーア派イスラム圏のあまたの巡礼を引き付ける聖人の廟や巨大な黄金のドームなど様々な施設を備えたイスラム教の聖地ハラムから始まり、町中のあまたの若い女性を引き付けようとピザやハンバーグのメニューを30種類も取りそろえたバーガー屋で終わりとなった。イランという国を走ってきて建前という入口から入り、本音という出口から出てきた、そのような感想である。

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by chukocb400sb | 2022-06-10 06:37 | 6 マシュハドからタブリーズ | Comments(0)

この旅行記は、シルクロードを西安からベネツィアまでレンタル・オートバイのパックツアーを乗り継ぎ、17年かけて走ってきた記録である。


by 山田 英司