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7-24 騎龍観音        9/24

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サフランという食材は日本ではなじみが薄いが、米料理に振りかけたり混ぜたりする香辛料としてイランを走った時にもよく出会った。かすかに酸味があり、さっぱりした食感である。米料理と肉料理のバランスを良くしてくれる。サフランボルという地名はサフランが多く自生していたことに由来するらしい。

今日の目的地サフランボルに着いたのは16時過ぎであった。この町は昔からシルクロードの交易で栄えた町である。丘に囲まれた谷のような場所に作られた町で、丘の斜面に狭い道路が築かれ古い調和のとれた旧い市街が世界遺産に登録されている。車やバイクは町の中に乗り入れることはできず、谷の底の駐車場に置いていかなければならない。

我々が泊まるジンジ・ハンという名のホテルは旧市街の真ん中にあって、17世紀の隊商宿を改装したものであった。建物は中庭を囲んでロの字型をしており、一部が博物館になっている。入り口には何とあのアルゼンチン軍団のBMWがはばかりもなく置いてある。なんと同じホテルか。2人一組で部屋を割り当てられドアの鍵を渡されたがこの鍵が複雑で3回ほど回さないと解錠できない。2階の自分たちの部屋に入ろうとしたが何回鍵を回しても開かない。騒いでいたら、隣の部屋のベテランのメンバーが出てきてあっさりとドアを開けてくれ無言で帰って行った。

部屋に入ると大きなダブルベットが置いてある。男二人でダブルベットかよ、何かの間違えだろと隣の添乗員の部屋のドアを叩いて助けを呼んだ。なんだとさっきのベテランのメンバーが部屋に来てくれて部屋を一回りし、奥にもう一部屋あるじゃないかと分かりにくい扉を見つけて教えてくれた。バイクで足手まといになるだけでなく、ホテルのドアやベッドの面倒まで見てもらう羽目になった。

この部屋は角部屋のスイートルームであった。どこがスイートかというと部屋の奥にもう一つ部屋があり、その部屋の奥に下に降りる階段がありそこにバスルームがあるのだ。恐ろしく複雑な造りである。それはともかく、この部屋のダブルベッドにはいたたまれない雰囲気があるので同室のメンバーと外に出ることにした。

地図を調べると丘の上に歴史博物館なるものがあることが分かった。そこを目指そうということでホテルの外へ出る。少し歩くと狭い広場があり、そこに何台かのバスが停まっていた。バスターミナルらしい。欧米人の旅行客がたくさんいる。広場から丘に登る坂道をたどると、塀に囲まれた2階建てのクラッシックな造りの博物館にたどりついた。ここの管理人は家族でやっているらしい。夫婦と小さな娘さんが入り口で迎えてくれて、奥さんが中を案内してくれた。


1階には昔使われていた生活用品が展示されていた。ミシンとかカメラは日本でもなじみのメーカーである。そしてなぜかいきなり「DosからWindowsへ」というパソコンの歴史コーナーが現れるのである。この町とウィンドウズは何か関係があるのかと奥さんに聞くと、いや特にないという答えであった。2階に上がると一部屋にケマル・パシャの銅像があった。ケマル・パシャはこの町と何か関係があるのかと奥さんに聞くと、いや特にない、彼はアンカラにいたという答えであった。

再び1階下りると別の大きな部屋に実物大の昔の町が再現されていた。パン屋さんがあったり鍛冶屋さんが仕事をしていたりと、当時の町の雰囲気が分かるのであった。あれ、この雰囲気どこかで感じたことがあったと思ったら深川江戸資料館の地階に作られた江戸の町の雰囲気ではないか。これで屋根の上に寝ている猫でもおいてあったらデ・ジャヴである。

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狭い坂の路地の何本かは土産物屋が連なっている。カシャカシャという音が聞こえたので一軒の家へ入ると1人の女性が機織り機ではたを織っていた。これで織ったものを土産物として売っているらしい。こんにちはと声をかけるとにっこりとうなずいてゆっくり見て行ってくれと目で合図するのであった。これで家賃を払って生計が立つのか不思議であるが、とにかくその女性は機を織り続けているのである。

博物館を出て坂を下っているとヴァイオリンを弾いている東洋人の女性がいた。足元にヴァイオリンのケースが広げておいてあり投げ銭が入っている。あのー、ひょっとして日本の方ですか、と声をかけてみた。ええ、そうです。あのー、何でこんなところで。

聞くと彼女はトルコに旅行に来てホテルに泊っていたところ、そのホテルの従業員をしていた今の旦那に惚れられて声をかけられ、言葉もわからないのに結婚してしまったそうだ。こちらで2年、子供にヴァイオリンを教えて生活費を稼いでいるということである。楽な暮らしではないと言いながら明るくケラケラと笑っていた。

どうしてそんなに上を向いて歩けるのか。何かこう、観音様が龍に乗って降りてきたような光輝くようなものを見た感じがした。龍に乗ってやってきた観音様は人々に慈雨を降らせて豊かな大地の恵みをもたらしたそうである。あまりのありがたさに同室の二人でありったけの金(ただし小銭)をヴァイオリンのケースに奉納したのであった。

シカシ、言葉モワカラナイノニ旦那ハドウヤッテコノ観音様ヲ口説イタンダ?

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by chukocb400sb | 2023-01-13 07:24 | 7 タブリーズからイスタンブル | Comments(0)

この旅行記は、シルクロードを西安からベネツィアまでレンタル・オートバイのパックツアーを乗り継ぎ、17年かけて走ってきた記録である。


by 山田 英司